「夢を見たことの無い人間はいないでしょう」
夢の中で青い女性が言い放つ。
「夢は必要悪です」
ああ、言いたいことはわかる。だが、それこそ夢の中でする議論ではないだろう。
俺は夢なんて見たくないんだけどな。
睡眠は疲れを癒すもので、娯楽ではないというのが俺の主張だ。だが声には出さない。
そもそもたいした疲れなんて無いんだけど。
「あなたは夢を見るべきです」
今見てる。
「夢をもっと活用するべき」
それはちょっとよくわからん。
「あなたは夢の可能性を知らない」
うん。知らない。よくわからない。
「あなたはいつから夢を見なくなった」
今見てる。・・・・・・ああ、そういえば久しぶりなのか。
「夢は、いいものですよ」
そうだよね。あ、起きそう。
今朝見た夢だ。俺は「見た夢を人に語る奴」
というのがこの世の中で五位以内に入るほど嫌いなのだが、
話のネタに困ったのか、あまりに印象に残った夢だったのか、友人にこの事を話していた。
「これは少々興味深い話だわ」
友人は腕組みを崩さず言う。
「普段夢を見ない人間が久しぶりに見る夢が、夢自体を語っているなんて。」
ふむ、まあ変わった夢だとは思う。
「冷静かつ迅速な私の分析によると、これは深層心理であなたが最近夢を見てないことを
意識している、ということからこんな奇怪な夢を見させたんだわ」
深層心理とかよく聞くけどそんなもの確かめようがないから結局同じことだな。
そもそも別に答えとか要らないし。
「まったく。あなたは『そもそも』とか『だが』とかそういうネガティブな接続詞を
使いすぎなのよ。だからコミュニケーション能力が著しく低いとか通信簿に書かれるのよ」
そんなこと書かれたとこはない。というかそんなこと今書いたら問題教師だろそんなの。
「そもそも、私たちは通信簿をもらう年齢ではない、ということを突っ込んで欲しかったのよね」
わかりにくいよ!
「抑抑」
え?
「そもそもを漢字で書くとこうなるのよ」
あ、そうなの。絶対今後使うことは無いわ。
「なんの話だっけ」
知らねえよ!
そんなことで俺の見た夢の話を友人にした話の話。続かない。
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